祇園祭に来ています(宵々山)


夜。
京都。
祇園祭
宵々山。
啓二と恵理、二人とも浴衣を着ている。


「じゃあ、かえろうか?」


「あっ、啓くんのお母さんに貰った扇子が無い」


「ええっ!」


「無くしたくない…」


「探そうか?」


「ありがとう、啓くん」


「来た道、全部、探そう!」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


恵理がつぶやく。
「全然、覚えないの…」


「どこに差してたの?」


「この胸のところ」


「何か買ったときかなぁ」


「あっ、コレっ! …似てるけど違う」


「ゴミ入れの中も探そう!」


「うーん、無いなぁ」


「あっ、あった!
 ちょっと汚れてるけど、コレだ!」


「良かった!」


「恵理、ちょっと泣いてるよ!」


「………」


「恵理が泣くなんて…」


「泣くときは、あるわよ」


「東京に、明日、帰るの?」


宵山は混むって聞いたから、今日までしか、宿、予約してない」


「昼まで見て、帰れば?」


「そうする」



投稿者 : 城田 博樹 | 投稿日時 : 2007.07.14. 13:15


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狭い広いの裕美(人違い)


土曜日。
午後9時40分。
走る乗用車。
裕美と拓郎が乗っている。


拓郎
「あ、ガソリン切れる。 ガソリンスタンド、寄ってもいい?」


裕美
「いいよ」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


ガソリンスタンドに入る乗用車。


拓郎
「レギュラー満タン、お願いします!」


男の従業員
「ハイ、レギュラー満ターン」


男の従業員がフロントガラスを拭く。


裕美
「何だろ? 向こうのあの女の子。
 さっきから、こっちばかり見てる。
 わっ、こっちに来た!」


拓郎
「窓、開けてあげて」


女の従業員
「ひょっとして、Aの宮保育園の吉川先生ですか?」


裕美
「違います」


女の従業員
「そうですか。すみませんでした」


裕美、窓を閉じる。
「私、前にも、同じことを聞かれたことがあるの!」


拓郎
「へーえ」


裕美
「どんな人だろ? 吉川先生って。そんなに似てるのかなー」


拓郎
「世の中に何人、自分に似てる人が居るんだったっけ?」


裕美
「何人だったっけ? でも、気になるなー」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


従業員達
「ありがとうございましたーっ」



投稿者 : 城田 博樹 | 投稿日時 : 2007.07.03 23:17


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狭い広いの裕美(最終話)


土曜日。
夜10時。
走る乗用車。
拓郎(30歳)と、裕美(28歳)が乗っている。
道はあまり混んではいない。


「今日、たっくんのお母さん、さすがだって思った!」


「なんで?」
拓郎、助手席の裕美のほうを見る。


「ちょっと、ちゃんと前見て運転してよ!」


「ごめん。ごめん」


「最後に、柿を出してくれたでしょ?」


「それがすごいの?」


「一人暮らししてると、柿って食べないのよ」


「そういうものなの?」


「柿って、果物屋さんで、ひと盛り、ふた盛りで売ってるでしょ?
 だから、一人暮らしの人は買わないのよ!」


「そんなに久しぶりだったの…?」


「5年…、ひょっとしたら、10年振りかもしれない…」


「裕美、学生の頃から、一人暮らしだったもんな」


「家族で暮らすと、こんなものが食べれるんだなーって思っちゃった!」


信号で車、止まる。


「じゃあ、結婚する?」


裕美、運転席を見て、微笑みながら、
「そんなプロポーズってあり?」



投稿者 : 城田 博樹 | 投稿日時 : 2007.06.27 21:06


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読書〜読み終える〜


各駅停車。
午後3時。
電車内。
立っている人が2、3人いるくらいの混み具合。
座席は、全部、埋まっている。
女の子が座っている。
19歳くらいの女の子。


文庫本を読んでいる。
本にはカバーがかかっている。


ページを指でつまんで持っている。
ページを立てている。


急に2秒間、止まる。


次のページへめくる。
すぐに、前のページへ戻る。


本の裏表紙を閉じる。


肩で息をし、ため息をつく。
正面を見る。
周りの人を、何人か見る。


物思いに耽りながら、
前の外の景色を、2、3分、見る。


本を胸の前まで持ち上げ、パラパラとめくり、
少し微笑む。


文庫本の紙のカバーを外す。
カバーを鞄にしまう。


本の表紙を軽く撫でる。
ひっくり返して、本の裏表紙も軽く撫でている。


また、正面を見、外の景色を見る。


突然、はっとして、後ろを振り返り、
窓の外を見る。


鞄と文庫本を持ち、大急ぎで電車を降りる女の子。



投稿者 : 城田 博樹 | 投稿日時 : 2007.06.24 13:16


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スルー入ります!(配役)


マクドナルド、正社員、早織・堀北真希


マクドナルド、アルバイト、菜保・夏帆


マクドナルド、チーフ格の正社員、玲子・寺島しのぶ


マクドナルド、アルバイト、林・林丹丹


の予定。


                         (城田 博樹)


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スルー入ります!(最終話)


マクドナルドK店、近辺。
走る乗用車。
男二人が乗っている。
定年の近い、商社マン、二人。
年は同じくらい。


マクドナルドへ寄って行きませんか?
 コーヒー、100円で飲めるそうですよ!」


「行きましょう!」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


マクドナルドK店。店内。


「お待たせしましたっ、安藤さん」


「105円ですか?」


「いいです。いいです。100円ぐらい」


コーヒーを飲みながら話す二人。


「日本は、いつまで、このような状況が続くんでしょうなー」


「もうしばらく続くでしょうなぁ」


「嫌な世の中になりましたなぁー」


「そうですなぁ」


黙って、コーヒーを飲む二人。


「そろそろ、行きましょうか?」


「そうですな」


「コーヒー美味しかったですな!」


「美味しかったです」


                              (城田 博樹)


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スルー入ります!(16)


マクドナルドK店。
ドライブスルー。


「スルー、入りまーす!」


乗用車。
キズだらけの車。
男と女が乗っている。
運転席には、男。
二人は、大学3回生。
同好会の副部長同士。


「今日の合コン、失敗だったね」


「やっぱり、そう思う?」


「<フィールダーズ・チョイス>の人たち、
 ホームランばかりだったじゃない」


「ホームランだった?」


「もう!、<ホームラン>ってこと! 
 野球で言うところの<ファール>もあったわよ!」


「<ダブル・フォールト>の人たちが、
 <ストライクゾーン>広げてくれたら、良かったのに」


「今度、<オーダー>変えてよね」


「地区大会あるから、今度、3か月後くらいかなー」


「<スリー・ポイント・シュート>の人たちと合コンしようかな。
 格好いい人多いらしいし」


「頭<切り替えて>プレーするから、許して!」


「今度、<ホームラン>打ったら殺してやるからね」


センバツの行進曲みたいなものだって。
 やってみれば、上手く行くって!」


                              (城田 博樹)


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