狭い広いの裕美(最終話)
土曜日。
夜10時。
走る乗用車。
拓郎(30歳)と、裕美(28歳)が乗っている。
道はあまり混んではいない。
「今日、たっくんのお母さん、さすがだって思った!」
「なんで?」
拓郎、助手席の裕美のほうを見る。
「ちょっと、ちゃんと前見て運転してよ!」
「ごめん。ごめん」
「最後に、柿を出してくれたでしょ?」
「それがすごいの?」
「一人暮らししてると、柿って食べないのよ」
「そういうものなの?」
「柿って、果物屋さんで、ひと盛り、ふた盛りで売ってるでしょ?
だから、一人暮らしの人は買わないのよ!」
「そんなに久しぶりだったの…?」
「5年…、ひょっとしたら、10年振りかもしれない…」
「裕美、学生の頃から、一人暮らしだったもんな」
「家族で暮らすと、こんなものが食べれるんだなーって思っちゃった!」
信号で車、止まる。
「じゃあ、結婚する?」
裕美、運転席を見て、微笑みながら、
「そんなプロポーズってあり?」
投稿者 : 城田 博樹 | 投稿日時 : 2007.06.27 21:06