サッカーボールを追いかけて


学生の頃、体育の授業で「サッカー」をとっていたことがある。


ドイツ留学から帰って来たばかりという、その講師の
サッカーに対する認識はこなれていて、<オフサイド>というルールを「女々しいことはしない」
と説明していた。
「日本のサッカーは直線的だからダメなんだ!」
とも言っていた。


「いい先生にあたった!
この先生の言うことは何でも聞こう!」
と私は思った。


ある日の授業で、ランニング、パス練習に続いて、
いつものように試合形式の練習を行なった。


試合中、サイドラインへ切れていくボールを、
ボールの一番近くにいた私は、諦めて追いかけなかった。
何故なのか、自分でも分からなかった。
とにかく、見送ってしまったのだ。


そうしたら、その講師は思いっきり叱った。


「何故、追いかけなかったんだ?
 無理だと分かりきったボールでもなかっただろう。
 全力で追いかければ、間に合ったかもしれないだろう。
 そこで頑張らなくてどうするんだ。
 あんなことは、もう絶対にするな!」


あまりにも理にかなっているので、反論できなかった。
もちろん、反論する気はなかったが。


フランス・三ツ星レストランの料理人は、一度、注意されたことを、
もう一度、注意されると、<クビ>になると聞く。


大リーグ・シアトルマリナーズイチローが言う。
「一度、失敗するのは、別にいいんですよ。
 同じようなことを、もう一度、失敗するのがいけないんですよ」。


「勝てそう、ならば、勝たなくてはならない」。
「勝てるかもしれないときに、負けるのは止めよう」。
「二度と、取れるかもしれないボールを見送るミスはしない」。


今の私には、これぐらいの心意気が必要だ。


                            (城田 博樹)


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